臨床心理士hanaのひとり妄想diary☆

総合病院勤務です。世の中の出来事を、いち臨床心理士の視点からいろいろ妄想しつつ、考えてみたいと思っています。

産後クライシスを「エゴグラム」で考えてみる。

こんばんは!臨床心理士 葉菜 です。

今日は最近よく聞かれるようになった「産後クライシス」について考えてみたいと思います!

 

よく聞かれる既婚男性の嘆き。。。

「子供が生まれたら、奥さんが冷たくなった」

「結婚した時は妻は優しかったのに…。」

 

女性は子供が生まれると、様々な面で「変わる」と言われています。たくさんの理由がありますが、女性ホルモンのバランスの変化は大きな一因のようですね。

女性の愛情に関して、実際の調査研究でこんな結果が出ています。

東レ経営研究所 ダイバーシティ―&ワークライフバランス 研究部長の渥美由喜さんによると、結婚すると妻の夫への愛情はトップになりますが、子どもが生まれると子供への愛情がトップへ、そして夫への愛情が一気に低下。ここまではなんとなく理解できますね。

注目すべきはその後で、二つのパターンに分れるそうです。

夫への愛情が徐々に回復するパターンと、低迷したままのパターン。

愛情回復組は、子育てを「夫と一緒にやりました」と回答した妻が非常に多く

愛情低迷組は、子育てを「一人でやりました」と回答した妻が非常に多かったようです。

この結果を受け渥美さんは「出産直後~乳幼児期のいちばん大変な時期に、夫が一緒に家事・育児をする姿勢があると、その後の夫婦関係がずいぶん変わり、家庭基盤がしっかりします。」と述べています。

とするとこの時期は、男性に頑張ってほしい時期になるのかもしれません、今後の夫婦の未来のためにも。。。

 

しかし実際良かれと思って手伝ったら逆に文句を言われたり、喧嘩のネタになったりして「じゃあ一体、どうしたらいいんだよ!!」と思う男性も、少なからずいるのではないでしょうか?

今日はこの時期の女性の心理を「エゴグラム」という心理分析を使って考えてみて、どのようなことをしたらよいかを考えてみたいと思います!

 

エゴグラムとは?

 精神科医エリック・バーンが編み出した「交流分析」を元に彼のお弟子さんであるジョン・M・デュセイが考えた心理分析の方法です。ネットで検索すると類似版のエゴグラムが出てきますね。書籍もたくさん出ていて、ご存知の方もたくさんいると思うのでここではこの説明は簡単にしていきます。

交流分析ではまず人間の心を3つの部分、親(Parent)の部分、大人(Adult)の部分、子ども(Child)の部分に分けて考えます。

f:id:hanasalon:20160113205203j:plain

こんな感じです。さらに弟子のデュセイはこの3つをさらに5つの部分に分けました。

f:id:hanasalon:20160113205540j:plain

 

それぞれの意味は以下の通りです。

  1. CP(Critical Parent)…「厳しい父親」のような部分。~すべき。ルールや道徳。
  2. NP(Nurturl Parent)…「優しい母親」のような部分。寛容。献身。
  3. A(Adult)…「合理的な大人」のような部分。現実的、論理的。
  4. FC(Free Child)…「元気な子供」のような部分。~したい。~はやだ。奔放。
  5. AC(Adapted Child)…「親の言うことをきく子供」のような部分。協調。

この5つのバランスでパーソナリティーを見ていく方法が「エゴグラム」になります。例えばこんな感じです。

f:id:hanasalon:20160113210038j:plain

俗にいうM型です。周囲にも自分にも甘く(CP、NP低)、現実的思考は得意ではなく(A低)協調性もいまいち(AC低)、自由をこのなく愛する(FC高)といったところでしょうか。

この激しい高低差を持つ人が実際に居たら周りの人間はちょっと大変ですが、高低差を少なくしたM型ですと、ムードメーカーになって周りを和ませる力があると思います。

 

さて前置きが長くなりましたが、本題に入りたいと思います。

目的は産後の女性の心理をエゴグラムで考えてみて、どう乗り切ったらよいかを考えることですね。

ということで、さっそく葉菜が想像して作ってみた「産後女性のエゴグラム」を紹介します。ここからはブログのタイトル通り葉菜の妄想(見立て?)ゾーンになってきますので、この点をご理解の上読んでいただけたら嬉しいです。

f:id:hanasalon:20160113211503j:plain

このエゴグラムは特に「産後クライシスに陥りやすい産後女性の心理」と考えてみてください。個人差が大きく出るところではありますが、多くの産後女性はこの状態なのではないでしょうか。ではこのエゴグラムを読み解いてみます。

まず非常に高いCPとNPが見られます。言葉も話せない、何もできない赤ちゃんの面倒を見ていくわけですから、しっかり面倒をみるという責任感と相手を無条件に受け入れるPの両方が高く求められるという意味です。特に生まれてから数か月は朝夜関係なく24時間赤ちゃんに付っきりになるので、なおさらでしょう。そしてAも高い値になっているのは、突然の事態に対してとっさに判断して対応することが求められることを意味しています。突然吐いたり、全身に発疹が出たり…赤ちゃんには突然何かが起きますからね。そしてFCの低さ。自分の時間はほとんどの方が「ない」と言っています。

 このような過酷な状況の中でも、家族(特に親戚)などの人間関係も大切になってくるので順応性も必要になってきます(AC)

 

この状態を続けていると、いつか破たんすることは目に見えています。では周囲の人(特にご主人)は具体的にどうしたらよいでしょうか。

ここでのポイントは、「高低差を少なくする」ということです。

CPとNPの部分をフル活用しているので、まずこの部分を低くする。FCが異常に低いのでこの部分にアプローチすることがポイントです。

具体的には「何かするけど、何をしたら君が助かるかわからないから教えてほしい。」と一声かけてから、言われたことをするのが良いと思います。

「この一言を掛けてから」が女性にとってはとって~~~~も重要なのです!女性は「自分のことを気にかけてくれているかどうか」をとても大切にするんですね。これは男女関係ないかもしれません。とにかく単に手伝うのではなく、「あなたのことを気にかけている」というメッセージをしっかり言葉で伝えるととても女性は嬉しいのです。その場では素直に喜ばないかもしれませんが、心の中では「あら♡」と思っているのです。この一言があるのとないのとでは、その後が結構違ってくる・・・と葉菜は思っています。

 またFCの部分ですね。よく言われているのは、自由な時間・息抜きの時間を作ることです。これもとても重要ですが、「美味しいお店で二人で食事でも」と誘うのも一つだと思います。断ってくる奥様もいるでしょう。でもここでもやはり「あなたのことを気にかけている」メッセージを伝える意味で誘ってみてください。

 

 相手にストレスが強くかかっている時は特に、相手からすぐにポジティブな返答が返ってこないことが多いです。しかし言葉は必ず相手に届いています。そして時間をかけてじわじわ相手の心に浸透していくものです。産後は夫婦ともに非常に大変な時期だと思いますが、少しでも参考になれた嬉しいです♪