臨床心理士hanaのひとり妄想diary☆

総合病院勤務です。世の中の出来事を、いち臨床心理士の視点からいろいろ妄想しつつ、考えてみたいと思っています。

相模原の中学生自殺のニュースを見て、イチ心理士として思ったこと。

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こんにちは!葉菜です。

昨日、とても悲しいニュースが報道されました。

両親(継父と実母)からの虐待を苦に親類宅で自殺未遂を図った中学生が、先月末亡くなったというニュース。

テレビ報道ではなんと!両親のインタビューも出ていましたね。あのインタビューはちょっと驚きましたが・・・。

 

このニュースで取り沙汰されている児童相談所(以下「児相」と略します)。その対応に非常に厳しい意見がたくさん寄せられています。

今日は児相のこと、そしてイチ心理士としてこのニュースをどう見ているか等を書いていようと思います。

 

児相の一時保護とは?

ニュースによれば、この生徒は市の担当課からの通報を受けて「通所」扱いになっていたようですね。

「通所」とは当事者の子どもや保護者を児相に通所させ、ケースワーク(社会資源の導入や環境調整など)や心理療法、カウンセリングなどを行い、虐待などの複雑困難な問題にアプローチしていく事です。

昨年の10月に母親が体調を崩して以降、生徒は児相に通所が出来ていなかったということなので、それまでは生徒本人と母親の二人で通所していたことが考えられます。勝手な想像ですがキーパーソンを母親として、暴力がひどい父親と本人の関係修繕に努めていたのでしょうか。

 

児相には「一時保護」というとても大切な機能があることは、みなさんご存じだと思います。

「一時保護」とは原則として子ども本人と保護者同意の元、行われるものです。しかし緊急性が高い場合は、保護者同意がなくても可能です。ただこれは短期間であるからこそ可能なことであり、同意が得られなくても“親権を持つ者は未成年後見人の同意を得るよう十分な調整が必要”とされています。

今回の場合だと保護者が一時保護を拒否したようなので、この場合は“よっぽどの緊急性”がないと緊急性の一時保護には踏み切れないわけです。

 

 

緊急性の判断の難しさ

今回の事件に関してニュースからの情報では非常に不十分なので、何ともいえないところですが・・・ここからは個人的な意見と想像(妄想)になります。

例えば乳幼児が両親から一方的に虐待を受けている場合、これは明らかに緊急度が高い気がします。乳幼児は非力で両親に対して何も抵抗が出来ないからです。

ただ中学生となると、ちょっと話が違ってくる気がします。まず子どもが“どういう子なのか?”ということ。子ども自体に何か(発達障害とか心身の障害とか)あることも考えられます。そうなると実際の虐待以上に“子ども自体にも問題がある故に、子どもが少し過剰に反応している”という判断になる可能性もあると思います。この場合は、緊急性が低くなってしまうのかな?と思いました。

 

 

本人にとっての緊急性をしっかり汲み取ることの大切さ

妄想の域になりますが・・・

ネットでも多数寄せられている意見のようですが、私も「児相の対応」と「子どもの反応」に温度差があるように思います。これは、児相から見る虐待の“程度”と子どもから見る虐待の“程度”に違いが生じている、ということだと思います。

 

自殺した生徒は、自分から夜中コンビニに駆け込んだり、児相に保護を求めたりと自ら積極的にSOSを出していたようですね。とても勇気がいった事だと思います。

ただこの生徒の行動を児相はどうアセスメントしていたか・・・

①この虐待に関して十分理解できる了解可能な反応であるか、または

②生徒が少し過剰に反応していると見ていたか・・・

保護者の了解なしの緊急一時保護をしなかったという点から、葉菜は勝手にですが後者の②の見方だったのかな?なんて思っています。

 

ただ、仮に②の見方だったとして、これが悪いとは一概に言えない現状があると思います。

一時保護という形を取るより、定期的な通所による関わりが良いこともあります。ご理解を得られにくい点かもしれないですが、“本人のニーズを満たすことが良くないこともある”からです。これは精神科領域では一般的な考えです。

 

どういうことか・・・

生徒本人は児童養護施設への入所を希望していたとありますが、児童養護施設への入所は「自他ともに認めるよっぽどのケース」になります。各地域から集まる選りすぐりの複雑困難な問題を抱えた子どもが入所するところです。

子ども本人がいくら望んでいても、児相などが“施設入所よりももっと出来ることがある”という判断になった場合、まずそちらのアプローチから行われると思います。中途半端に「一時入所」という本人のニーズを満たしてしまうと、子ども本人の“まだ出来ることがある事へのモチベーションが下がってしまう可能性”があるからです。

今回の事件も、児相はこんなアセスメントをしていたのではないかな?と勝手に思いました。

 

個人的な児相の対応の疑問点

  1. この自殺した生徒から見た、両親からの虐待の「主観的苦痛」の程度
  2. この生徒の心の耐性と衝動性

この2つのアセスメントについてです。自殺(衝動性)はどの程度推測されていたのでしょうか。完璧な予測することは困難だと思いますが... 

情報量が非常に限られての葉菜の意見ですので、今後出てくる情報によっては的外れなものになるかもしれません。

 

虐待などに苦しむ子供の最後の砦が児童相談所。今後も児相の働きに大きな期待を持っていますし、被る領域で活動する葉菜としても、自分の行動をしっかり振り返っていきたいと感じています。

 

非常に長くなりましたが、今現在の報道からはこんなことを思っています。

 

 

最期まで読んでいただき、ありがとうございました!

 

 

葉菜