臨床心理士hanaのひとり妄想diary☆

総合病院勤務です。世の中の出来事を、いち臨床心理士の視点からいろいろ妄想しつつ、考えてみたいと思っています。

しつけと称した虐待を防ぐために

こんにちは!葉菜です。

今日は最近よくニュースを賑わせている虐待について私なりに考えてみようと思っています。

 

よく虐待のニュースが報道されると

「しつけの一環でやっていました。」

という加害者である親のコメントを聞きますね。

うすうす虐待の域かも・・・と親自身も感じつつ、認めない場合もあると思います。

でも本当に「しつけの一環」としてやっていて、自分の行為に疑いを持っていないこともあると思います。

 

このようにしつけと虐待というのは、はっきり線引きが出来ず非常に難しい概念だと思います。

「スキンシップとセクハラ」の関係性と似ているかもしれません。

 

 

親は子に世の中のルールを教える義務がある

子どもは親や大人を通して、多くのことを学んでいきます。

例えば、「世の中に対する基本的信頼感」も親から学びます。育児書なんかに書いてありますね。

外の存在、要は「自分以外の他者、世の中」は信じられるものか、自分に対してポジティブなものであるか否か、です。

ただそれだけではダメです。いくら世の中が信じられてポジティブなものだとわかっても、なんでも許されるわけではありません。限界や制限があります。それはお互いがお互いに気持ち良く共存していくためのルールです。

 

子どもにとって親は、養育者であり、世界の全て(ある一定年齢まで)とも言える?

心理学を学んでいるとそんな風に思いますし、

親や大人の、子供に対する役割の大きさを感じ、身が引き締まる思いがします。

 

 

どのように伝えるか、が問題

問題はどのようにこれらの大切なことを伝えるか・・・なんですよね。

 

みなさんは虐待のニュースを聞いて、どんな感想をお持ちになりますか?

私は、“それはない、酷過ぎる・・・”と思うものもあれば、“気持ち、わからなくはない・・・”と思うものも、正直あります。

 

子どもはかわいいです。私も大好きです。

ただ、ずっとそう思い続けられるか・・・というと、難しい。

いくら注意しても聞かず、自分のペースで動き続けるし

特に小さいと会話が成立しないので、それも大きなストレスです。

子どもができると、子どもが世界の中心になってきますからね。

 

かわいい、だけじゃ終われない、それが子どもだと思うんです。

とても大切でかけがえのない存在ですが、大きなストレス?というか「悩ましいもの」とも言えるのではないでしょうか。

 

悩ましいものは、子どもだけではありません。

家の経済状態や夫婦問題、また孤立、ひとり親なんかも考えられます。

いろいろな要因が重なってイライラが募り、つい暴力的な形で子どもに接してしまう。しつけの度が過ぎてしまう。

気持ちは十分わかります。

 

 

親の「状況」と「精神状態」がkeyである

よく虐待する親に焦点を当てると、その親も小さいころ虐待されていた被虐待児である、なんて話を聞いたことありませんか?

これは「虐待の世代間連鎖(伝達)」なんて言われているものです。

要は親の生育歴が大きく関与しているという視点です。

 

ただ、これに関しては否定する研究結果が出ています。

少し古いものですが、平成17年に東京都福祉保健局が発表した「児童虐待の実態Ⅱ」によれば、

 

「(虐待者の)生育歴の特別な状況についてみると、「特になし」と「不明等」の合計が4 分の3 あり、決定的な特徴を読み取ることはできませんでした。「被虐待経験」のある虐待者は9.5%

でした。」

http://www.fukushihoken.metro.tokyo.jp/jicen/gyakutai/index.files/hakusho2.pdf

 

と書かれています。

他の部分も読んでまとめていくと、経済的な問題(困難)や夫婦関係、孤立などの過程の状況と親の精神状況が複雑に絡み合った結果、虐待に至るようです。

 

 

親だって不完全であり、支えを必要とする存在である

子どもにたくさんのものを分け与える親。でも与える一方では、親のエネルギーは枯渇してしまいます。誰かを支えるには、誰かに支えてもらう必要があります。

また具体的な家庭の問題も、一人で抱えていてもどうにもならないものが多いと思います。

親は完全であるべきではありません。完全な存在にはなれないし、それが普通です。

大切なのは不完全である自分を素直に見つめ、他者にSOSを出すことではないでしょうか。決して恥ずかしいことではないし、むしろ尊敬すべき姿だと思います。

 

何に困っているかわからず、うまく伝えられない方もいると思います。

相談することに抵抗がある方もいると思います。

 

ただ抱え込んでいると、ただただ煮詰まるだけで何もいいことはありません。

相談の切り口はなんでもいいので、とにかく声を上げてほしいと思います。

ネットで検索すると、子育てに関して、夫婦関係に関して、経済的な問題に対して相談できる窓口はたくさんあります。

 

 

外へ、外へ

残念ながら、相談すればすべて解決するわけではないです。それは事実です。

“解決しないなら相談する意味がない”

このようにおっしゃる方はとても多いです。

カウンセリング場面でもよく聞かれる言葉です。

 

しかし、相談することのメリットは他にもあります。

「自分のつらさを他人に知ってもらう」

これは体験された方はご存知だと思いますが、これだけでも気持ちは全然違います。

気持ちが少し軽くなり、今までの自分とは違った考え方・見方ができるようになることもあります。

この「気持ちや考え方が変わる」ということは、虐待に関してもとても大切なことだと思います。

家の窓を開けると、室内の空気が出ていき、室外の空気が入ってくる

そうすると、空気のよどみが取れる・・・そんなイメージでしょうか。

 

これを読んでくださっている人の中には、もしかしたらパートナーが虐待をしていてどうしていいかわからず、やり過ごしている方もいるかもしれません。

やり過ごす理由は様々だと思います。

相談していることがバレたら、パートナーさんがあなたの前から消えてしまうかもしれない不安であったり、酷い暴力をあなたに振ってくるかもしれない、コトを荒立てたくない、周囲からの冷たい態度や目線が怖い・・・理由はたくさんあるのだろうと思います。

 

ただやはり、このままの状態を続けることは、良いとは言えないと思います。最悪、警察にお世話になることもあるかもしれませんし、時間が経てば軽快していくものでもないからです。

 

ただ、いじめを受けている子がいじめのことをあまり周囲に相談しないことと同じで、そう簡単な話ではないですよね。

 

こういう方は全国に結構いらっしゃるのではないかと感じています。

こういう方にはどういうものがあったらいいのか…

”相談してほしい”としか言えない現状なのですが

一人の臨床家として、虐待のことや相談窓口、サポート体制など今後も考え続けたいと思っています。

 

長く、まとまりのないブログになってしまいました。。。

 

 

本日も最後まで読んでいただき、ありがとうございました!

 

 

葉菜